財産の相続や分割を円滑に進めるために、活用する人が増えてきた『家族信託』。
今回は、注目の高まっている『家族信託』を中心に、成年後見制度との違いや、家族信託が使われるケースについて、詳しく解説していきたいと思います。
そもそも信託とは
信託とは、簡単に言えば、
財産の運用や管理を信頼できる人や機関に任せる、といったものです。
法律的には、『財産権の移転が行われること』と、
『財産権の移転を受けた者が、一定の目的にしたがって、移転を受けた財産の管理または処分をすること』の2点が、信託の構成要素となっています。
家族信託について
家族信託とは、財産管理の一つの方法のことです。
2007年9月30日に施行された改正信託法によって出来た、新しい財産管理の仕組みです。それまでは、信託銀行でないと信託は利用出来ませんでしたが、改正により、一般の人でも信託を利用することが出来るようになりました。
家族信託では「委託者」「受託者」「受益者」といった3つのキーワードが出てきます。
「委託者」とは、財産を持っている人であり、管理や処分を任せたいと思っている人を指します。また、「受託者」とは、委託者から財産を託される相手であり、実際に財産の管理や処分を行う人のことです。最後に「受益者」ですが、受託者に託した財産から。経済的な利益を受ける人をいいます。
信託契約の内容によっても異なりますが、契約当初は委託者=受益者となることがほとんどです。
例えば、本人が息子と信託契約を結び、財産の管理や処分を任せていた場合でも、受益者を本人に設定しておくことで、不動産から発生した収益や不動産を売却した代金は全て受益者である本人が受け取ることになります。
成年後見制度との違いについて
家族信託と似たような仕組みに、成年後見制度がありますが、両者の違いとはいったいどういうものでしょうか。
家族信託の受託者は、目的の範囲内で、財産を自由に運用したり処分したりすることが可能です。不動産の処分の場合においても、登記上の受託者が所有者として取引を行うことが出来ます。
対して、成年後見制度の後見人は、財産を維持しながら本人のために支出することだけが認められています。そのため、資産の積極的な運用や、財産の減少につながる生前贈与なども行うことは出来ないといった違いがあります。
家族信託が使われるケース
家族信託を行う場合には、「何のために行うつもりなのか」といった目的をきちんと考えておく必要があります。目的の例として、いくつかをご紹介します。
(例)
・認知症の妻(夫)に後見人をつけなくて済むように財産を残したい
・子どもがいないため、妻(夫)が亡くなった後は、自らの血族に財産を残したい
・認知症などにより、判断能力が低下する前に、家族に財産を託したい
今回は、『家族信託』を中心に、
成年後見制度との違いや、家族信託が使われるケースについて解説してきました。
最後までお読みいただき、有難うございました!