意外かも知れないのですが、2019年においても「女性」を主においた相続に関する調査結果は多くないのが現状です。そのため、数年前に行われた調査結果についても、かなり貴重なものとなります。
少し古い調査になりますが、今回は、2015 年3月に明治安田生活福祉研究所により実施された「相続と財産に関する調査」についてお伝えしたいと思います。
この調査は、「女性の相続と財産に関する研究会」(座長:上村協子東京家政学院大学教授)において、全国の40歳代~60 歳代の男女 4,800 名を対象とした、かなり大規模な調査結果となっています。
そもそも調査の目的とは
日本で初めてと言われている、都市型相続調査が行われたのが1988年。その調査後からバブル崩壊や介護保険制度の導入に加え、「家」制度への意識の変化、女性の社会進出に伴った家族意識の変化などが目立ってきています。加えて、高齢化の進行や介護の負担などにより、相続を取り巻く様相は大きく変容しました。
そのため、今回の調査では、「相続」を大きなライフイベントとして捉え、性別や介護への貢献による父母からの相続の状況の違い、相続に関する意識の違いを明らかにする目的での調査となったようです。
※全国の40歳以上、69歳以下の男女が対象となっています。
相続への意向について
1988年調査時よりも、 財産を「遺せそうにない」「遺すつもりはない」と考える方が大幅に増加しています。老後の生活費がいくらかかるかを見通せなくなっていることや、親子関係の変化による影響かと考えられます。
男性では各年代で大きな差は見られませんでした。しかし女性では、高齢層ほど「遺したいと思う」を回答した方の割合が多くなっていました。また、子どもに「財産を遺したいと思う」と回答のあった方に対して、誰に遺したいかを訊ねたところ、 男女ともに「子どもに平等に遺す」が6割超と際立って高くなっています。1988年の調査時よりも「子どもに平等に遺したい」と考える方が大幅に増加していることが伺えます。
主に誰が介護をしたのか
母の介護の場面においては、子ども(「あなた(回答者自身)」、「あなたの兄弟姉妹」)による介護が多くなっています。しかし、父の介護に比べて多様なパターンが見られます。男性の場合、特に「あなた(回答者自身)」 の「妻」が主な介護者である場合が高いことと、「一人っ子」の場合「あなた(回答者自身)」 が主な介護者である割合が 42.0%と際立って高くなっている点が目立っています。
ちなみに女性の場合においては、いずれのケースでも、長女である「あなた(回答者自身)」が主に母の介護に携わっている割合が最も高くなっています。結果として、介護の多くが未だに「女性に依存している」実態が見られます。
相続の実態について
父から相続したものとして、男性では「居住用の土地・家屋」が 60.7%、「預貯金、有価証券」が 58.3%と他のものより圧倒的に高くなっています。一方、女性では、「預貯金、有価証券」が 67.2% と他の相続したものの中では際立って高くなっており、これは男性と比べても約10 ポイント高くなっていました。
父から男性への相続の場合においては、「居住用の土地・家屋」と「預貯金、有価証券」、女 性へは「預貯金、有価証券」が主となっていることが分かります。また、母からの相続したものでは、男女ともに「預貯金、有価証券」の割合が最も高く、男性では 65.6%、 女性では 75.0%となっていました。
相続対策について
相続税を軽減するための対策を講じているか、検討をしているかどうかについての結果では以下のようになっています。
対策をする意向のある方(「している」+「(今はしていないが)するつもりだ」)は 35%ですが、 対策をする意向のない方(「するつもりはない」+「必要ない」)は 65%の結果となりました。性別では大きな差は見られませんでした。
また、回答者夫婦の貯蓄残高別で見てみると、「5,000 万円以上」の方でも「している」と回答のあった 方は 15.2%となっています。貯蓄残高が増えるにつれて「(今はしていないが)するつもりだ」 の割合が増えますが、「2,000 万円以上 3,000 万円未満」の層でも、「している」+「(今はしいて いないが)するつもりだ」と回答のあった方の割合は4割程度にとどまっていました。不動産を含めた相続を考えると、相続税軽減のための方策や検 討については、60 代ではまだ検討中の段階と言えるかと思います。
もっとじっくりと見てみたいという方は、下記リンクからダウンロードしてみて下さいね。
https://www.myilw.co.jp/research/report/2015_02.php
今回は、「相続と財産に関する調査」について、改めて解説してきました。
最後までお読みいただき、有難うございました!