2018年における国土交通省の調査においては、全国の空き家は、846万戸となっており、1988年の394万戸から約2倍に増加している結果となっています。じつは空き家となってしまう最も多いきっかけは「相続」です。空き家を相続したくないために相続放棄を検討される方もいらっしゃいますが、それには注意が必要です。
今回は、「そうだったの!?空き家問題と相続放棄について」書いていきたいと思います。
そもそも「空き家」とは
「空き家」とは、一般的に人が住んでいない状態の住居を指しますが、じつは「二次的住宅」「賃貸用又は売却用の住宅」「その他の住宅」の3種類に分かれます。
「二次的住宅」とは、たまに寝泊まりする人がいる状態のものです(ex.別荘)。また、「賃貸用又は売却用の住宅」とは、新築・中古を問わず、賃貸又は売却のために空き家になっている住宅を指します。前述の2種類以外が、「その他の住宅」に当てはまります。
空き家の推移と種類別の内訳
1988年に394万戸であった空き家は、年々増加の一途を辿っており、2018年には846万戸となっています。種類別の内訳ですが、「二次的住宅」自体は、ほぼ横ばいを保っており、2018年においては、「賃貸用又は売却用の住宅」が461万戸と最も多く、次いで「その他の住宅」が347万戸となっています。
都道府県別の空き家率
都道府県別の空き家率ですが、全国平均は13.6%であり、最も空き家率の高い県は山梨県で、21.3%となっています。次いで、和歌山県20.3%、長野県19.5%となっています。別荘などのある山梨県や長野県が高い空き家率を示しています。
相続がきっかけで「空き家」が増える
前述のように、全国にはかなりの数の空き家があり年々増加していますが、じつは空き家となってしまう最も多いきっかけは「相続」です。
例えば、両親が住んでいた自宅を「相続」してしまう場合です。相続人が実家を離れ別々に暮らしている場合には、誰もその家に住む人がいなくなり空き家となってしまいます。遠方で生活しているため、誰も管理することができず、そのまま空き家が放置され老朽化して放置してしまいます。
譲渡益が出るような空き家であれば、すぐに買い手が見つかりますので、困ることはないでしょう。しかし、地方や田舎の空き家の場合、なかなか買い手を見つけることができないことも少なくありません。売りたくても売れない『負動産』となってしまうことが多いです。
売りたくても売れずに、持っているだけで「毎年の固定資産税が発生する」「建物が台風等で倒壊したら修理代がかかる」「タダみたいな金額で売るにしても建物取り壊し代だけかかってしまう」となれば、誰も所有したくないと考えるのが普通です。遺産分割の中で相続人たちは『負動産』を押し付け合うことになるかも知れません。
相続放棄を検討する際の注意点
『負動産』を取得したくない場合には、相続放棄を検討することも考えられますが、いくつか注意すべき点があります。
第一に、相続放棄をした場合においても、『負動産』の管理責任は残ってしまいます。民法第940条第1項の根拠があり、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」となっています。
第二に、相続放棄をしてしまうと『負動産』だけではなく、それ以外の全ての財産を引き継ぐことができなくなります。そのため、現預金がある場合にはそもそも相続放棄を検討することが難しいでしょう。
第三に、相続放棄をした場合には、その次の順位の方が新たに相続人として出てくることになります。新しい相続人を巻き込んでしまうことになるので、関係性が悪くならないよう注意が必要です。
最後に、これが非常に重要なのですが、相続放棄が認められた後は理由があったとしても相続放棄を撤回することはできません。例えば、相続放棄する前には気づかなかった(知らなかった)高価な相続財産があることを後に知り、やっぱり相続したいから放棄を撤回にして欲しいと言ってもそれは認められません。
相続人の立場になってから相続放棄ができる期限として3ヶ月間の猶予がありますので、事前に『負動産』を含めた相続財産の調査をしっかりと行ってから決断する必要があります。
まとめ
・「空き家」とは、「二次的住宅」「賃貸用又は売却用の住宅」「その他の住宅」の3種類に分かれる。
・都道府県別の空き家率の全国平均は13.6%であり、最も空き家率の高い県は山梨県で、21.3%、次いで、和歌山県20.3%、長野県19.5%となっている。
・相続放棄をした場合においても、『負動産』の管理責任は残ってしまう。
・相続放棄をしてしまうと、全ての財産を引き継ぐことができなくなる。
・相続放棄をした場合には、その次の順位の方が新たに相続人として出てくる。
・相続放棄が認められた後は、理由があったとしても相続放棄を撤回することはできない。
以上、簡単ではありますが、
「そうだったの!?空き家問題と相続放棄について」を解説してきました。
最後までお読みいただき、有難うございました!